-> 朗読箇所参照
今日の第1朗読で、エバは悪魔の誘惑に負けて、罪を犯してしまいました。 更にエバは、一緒にいたアダムを誘惑して、ともに悪の道に引き入れてしまいました。 女は怖いですね。 女は罪を犯しやすい動物。 そして、男は女によって罪を犯す……昔は、この聖書の場面を、そんなふうに読み取っていたんだそうです。 世界中どこでも、女性は差別されていましたからね。 もちろん皆さんは、そんなふうに聖書を読んではいけません。 後でまた繰り返しますが、聖書を自分の都合の良いように読むこと……それ自体がもう、罪の始まりです。
とにかく、アダムとエバは、悪魔の誘惑に負けてしまいました。 それに対して、今日の福音書で、イエス様は悪魔の誘惑に打ち勝っていますよね。 この違いは何でしょうか。 私たちも毎日、悪魔の誘惑を受けています。 ウソをついちゃおうかな、人を欺(だま)しちゃおうかな、サボっちゃおうかな、知らないふりをしようかな……いくらでもあるでしょ。 どうしたら私たちは、様々な誘惑に打ち勝つことができるんでしょうか。 今日の第1朗読と福音朗読をよく読むと、そのヒントが分かります。 二つのことが分かると思います。 一つ目は「苦労をする」ということ。 二つ目は「聖書の言葉を正しく理解して受け止める」ということです。 一つずつ、お話ししますね。
一つ目です。 まずアダムとエバ。 悪魔に出会う前、二人はいつも仲良く一緒に暮らしていました。 二人は孤独を知りませんでした。 しかも、二人が生活していたところは、エデンの園です。 パラダイスです。 何の不自由もなく、何の苦しみもありません。 二人は何かに耐えて、何かを我慢する、ということを知りませんでした。 それで、悪魔にコロッと欺されてしまったんですね。 一方、イエス様はどうだったでしょうか。 イエス様は、悪魔から誘惑を受ける前、たった一人で荒れ野にこもって、四十日間の断食をしています。 淋しかったでしょうね。 お腹もすいたことでしょう。 イエス様は神の子ですけど、人間としてお生まれになりました。 イエス様の心も体も、私たちと同じように、普通の人間の心と体です。 でも、その四十日間の試練によって、イエス様の心と体は強められたんですね。 イエス様は神の子だから、そんな凄いことができたんだ、なんて考えてはいけません。
イエス様は、悪魔からの誘惑に3回も打ち勝っていますが、その3回の答えは全て聖書の言葉を使っています。 3回とも「申命記」という聖書の言葉を使って、悪魔をやっつけているんですね。 エジプトの奴隷だったイスラエル人たちは、モーセに導かれてエジプトを脱出します。 そして、四十年間も荒れ野をさまよい続けます。 やっとのことで、神様が約束して下さった豊かな土地を目の前にします。 その時に、モーセがイスラエル人たちに語った言葉が「申命記」です。 モーセが語っただけではなくて、イスラエル人たちが理解して、心に刻んだ言葉です。 彼等は四十年間も苦しみ続けた。 だから、神様がモーセを通して語ってくれた言葉を、理解することができたんですね。 その「申命記」の言葉を、イエス様はそのまま使って、悪魔をやっつけてしまいました。 神様の言葉に力づけられながら苦労を重ねた人間は、悪魔より強いということです。 皆さんはどうですか。 今まで、淋しい思いを経験しなかった人はいないでしょう。 何かに困ったり、何かに苦しんだり、何かを我慢しなくちゃいけなかったことも、いっぱいあったことでしょう。 聖書の言葉に励まされながら、そういうことを全部乗り越えて来た皆さんは、すでに悪魔より強いはずなんですね。 今日、洗礼志願式を迎えた方たちにもひと言。 洗礼を受けたからと言って、苦労がなくなる訳ではありませんよ。 本物の信仰とは、そんな御利益信仰ではありません。 洗礼によって神様と結ばれて、試練に打ち勝つことができるように……この心を忘れないようにして下さい。
二つ目のお話しをします。 イエス様は「申命記」という聖書の言葉を使って、悪魔と戦いました。 でも、悪魔も頭が良くて、ずる賢いですからね。 悪魔の2回目の誘惑の言葉、これも聖書の言葉なんです……「神の子なら、飛び降りたらどうだ。 『神があなたのために天使たちに命じると、あなたの足が石に打ち当たることのないように、天使たちは手であなたを支える』と書いてある」……これ、聖書の詩編の言葉です。 神様の御言葉を、悪魔は勝手に解釈して、自分の都合の良いように使っています。
実は、エバも同じなんですね。 今日の第1朗読のすぐ前のところで、神様は二人にこうおっしゃっています……「園のすべての木から取って食べなさい。 ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。 食べると必ず死んでしまう」……でも、エバが悪魔に答えた言葉はこうです……「わたしたちは園の木の果実を食べてもよいのです。 でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない、触れてもいけない、死んではいけないから、と神様はおっしゃいました」……分かりましたか。 エバは「触れてもいけない」と言っていますけど、神様はべつに、「触っちゃいけない」なんて言っていません。 エバは勝手に神様の言葉に自分の言葉を付け加えて、ウソを言っているんですね。 勝手に尾ヒレをつけて、大げさなことを言っているんです。 この言葉の裏には、「神様は私たちに、触ることすら許してくれないんですよ」という不満が隠されています。 悪魔は頭が良いので、エバが語ったこのウソの言葉から、エバの不満をしっかり見抜いてしまったわけです。
今、世間で話題になっている旧統一教会は、キリスト教の新興宗教団体です。 その他にも、モルモン教とかエホバの証人という団体もあります。 以前にもお話ししたことがありますが、この3つの教団には、皆さん、絶対に近づいてはいけません。 最初は優しい笑顔で近づいてきます。 私みたいにオッカナイ顔をした人はいないでしょうね。 そして、聖書の御言葉を使って、いろいろと教えてくれます。 分かり易くて聞き心地の良い言葉です。 最初のうちは、本当のことを、誰が聞いても正しいことを教えてくれます……「人を愛しなさい。 父母を大切にしなさい」……やがて、その真実の言葉の中に、次第にウソを紛れ込ませます。 素朴な心を持った人は、教団の人に対して、もういくらかの信頼感を抱き始めていますから、このわずかなウソを見破ることができません。 そして少しずつ洗脳されていく訳です。 もう分かりましたでしょ。 聖書をちゃんと読んで、神様の御言葉をちゃんと受け止めること。 自分の都合の良いように読んだり受け止めたりするのではなくて、正しい読み方と正しい受け止め方をすること。 それが大切です。 毎週の説教で、私は適当なことをくっちゃべってるようですけど、全部、教会の正しい考え方に従っています。 ウソは一度もついていません。 まとめます。 一つ目……「苦労して、試練に打ち勝ちなさい」……二つ目……「聖書の言葉を正しく理解して、受け止めなさい」……この二つのことを心に留めて、四旬節を過ごしましょう。 特に洗礼志願者の方たちは、復活徹夜祭の洗礼に向けて、正しい心の準備を続けて下さい。 悪魔の誘惑に打ち勝つ力を、神様がきっと与えてくれることでしょう。